Tractable


13.02.2023

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損害調査分野で「仕事の本質的な変化」を促すTractable AI - 損害保険ジャパン株式会社 保険金サービス企画部 損害調査グループリーダー 亀井義之

自動車保険事故の損害査定には、非効率なプロセスが多く存在します。保険金のお支払いに時間がかかってしまうということは、事故対応を通じたお客さまの体験に直結する課題です。その解決のために、Tractableが開発したのが、AI技術で修理見積の査定業務を効率化する「AI Review」。そして、AIを活用することで2025年までに、損害調査事案年間100万件のうち4割の自動化を目指すのが損害保険ジャパン株式会社(以下「損保ジャパン」)です。

損保ジャパンで長年にわたり車両損害調査の最前線に従事し、本社では人材育成をメインで担ってきた、保険金サービス企画部 損害調査グループリーダー・亀井義之氏。「AI Reviewの活用推進は、アジャスター(損害調査のエキスパート)や修理工場の業務変革に繋がる」と語る亀井氏に、今後の可能性について伺いました。

(聞き手:カスタマーサクセス部門 日本兼APACヘッド 山村明)

2023年度には、全アジャスターがAI Reviewを使いこなしている状態に

――AI Review導入における、亀井様のミッションを教えてください。

亀井義之氏(以下、敬称略):弊社では、「事故対応力」をブランドとして価値提供していくことを目指しておりますが、そこで大前提になるのが、適切な修理費用を算定することです。そのために、会社としての仕組みを構築することが私のミッションです。

さらに、労働人口の減少などの環境変化を踏まえると、「人にしかできない仕事」と「AIやデジタル技術を活用して効率的に進める仕事」とを融合させていく必要があると考えます。

AI Reviewを導入することで、今後はアジャスターが確認する事案は、AIでは処理できなかった複雑な事案のみになっていきます。人とAIの融合を進展させることで、損害査定業務の中で人が介さなくてもよい部分はあらゆる効率化が図られ、時間を創出していきます。そして、アジャスターにはその時間を「人にしかできない仕事」にあててもらいたい。2023年度には、全アジャスターが日常的にAI Reviewの画面を開いてフル活用しているという状態が、次のマイルストーンです。

お客さまのために、「変化を恐れること」をやめる

――目標実現における課題と取り組みを教えてください。

亀井:AI Reviewという仕組みを導入するにあたり、従来の仕事のやり方を変えることに対する抵抗感や不安を持つアジャスターは少なくないでしょう。それらの消極的な思いをしっかり払拭し、前向きにチャレンジしていける人材を増やしていくことが本部の課題です。

そのためには、アジャスター1人1人と向き合って対話を深めることと共に、先ほど申し上げたように、AI Review導入で創出した時間を「人にしかできない仕事」にあてるというポジティブな方向性を提示することに取り組みます。

社会がこれだけスピード感を持って変化する時代において、現状維持を望むということは後退と同じ。「変化を恐れることをやめる」というメッセージを私たちは発信し続けますし、目指すべき損害調査の将来像をメンバー全員で共有する必要もあります。その際に常に立ち返るのは「お客さまのために」という視座です。

AI Reviewを導入したのは、損害調査における非効率なプロセスを改善し、保険金支払いを迅速化することで、お客さまに貢献するためです。業務の変化に対する戸惑いについても、「真にお客さまのためになっているのか?」と1つ1つ考えて行動することで、新たなチャレンジに向かって動いているという手応えがあります。

AIが生み出す体験の変化が、“仕事の楽しみ”に繋がる

――AI Reviewの導入によって損害調査業務を徹底的に効率化した先に、どんな可能性を感じていらっしゃるのでしょうか。

亀井:アジャスターの業務にも本質的な変化を促すと思います。例えば現在、画像事案の担当者は月間約200件の事案を担当しています。これに対して、弊社では2025年までに全ての車両損害事案のうち4割をAIによって自動化することを目指していますが、2割の自動化を実現するだけでも相当な時間の創出となります。

これまではアジャスターが10件中10件の事案に対して目を通して対応していたところを、そのうち8件に集中できるようになることで、これまで培った自分のスキルを発揮し尽くすことや、人だからこそ成し得る整備工場との信頼関係の構築などに、新たに目を向けることが可能になります。

それは、本来アジャスターに求められている領域へ注力できるようになるということです。さらには、工場とのやりとりに使用するファックスなど、紙文化をいかに減らしていくかといった業界を横断した課題にも、アジャスターが取り組む機会が生まれていきます。

それらの変化に、“仕事の楽しみ”を見出すアジャスターが必ずやいるでしょう。その方たちに先頭を走ってもらいながら、それがスタンダードになるような組織をつくっていきます。同時に、従来のやり方に慣れてしまった方とも注意深く向き合いながら、より本質的な方向へ導いていくことも重要だと感じます。

AIで蓄積したデータを糸口に、整備工場との対話を活性化する


――AI Reviewの導入によって、工場の業務にも変化が促されるのでしょうか。

亀井:AI Reviewによる業務効率化と、双方の信頼関係の構築が順調に進めば、アジャスターと整備工場の方とのやりとりする時間が減ることになります。工場の方にとってみれば、お客さまと向き合う時間や、実際の修理にかける時間を大切にしていただく機会になります。

AI Reviewの活用が現場に浸透する中で、整備工場からいただける見積もり内容の質が向上していけば、「アジャスターからの電話が1本、2本減る」といったことを工場の方にも具体的に実感いただけるようになると思います。そうなれば、先ほどの紙文化の話など、根本的な問題の解決に向かうはずです。

また、AIが蓄積したデータからは、各工場とその近隣工場との差異なども把握をすることができます。アジャスターがAI Reviewを活用すればするほど、修理にかかっている工数が他の工場と比較してどうなっているのかなど、さまざまな分析が可能になっていきます。そのデータ分析の結果を会話の糸口として、お客さまからお預かりしている車両を1日でも早く安全な形でお戻しすることに向けて、私たち保険会社と整備工場が互いに改善する契機にもしたいと思います。

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