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お客さまと社会のために。“歩みを止めない”ためのAI技術 〜人とデジタルのハイブリッドで業務に変革を巻き起こす〜 – 損害保険ジャパン株式会社 保険金サービス企画部 企画グループリーダー 酒井喬弘

デジタルによる業務効率化や基幹システムの刷新といった大規模なDXを進めるとともに、データ活用を起点とする新たなビジネスモデルの創造を目指す損害保険ジャパン株式会社(以下「損保ジャパン」)。人とAIなどのデジタル技術のハイブリッドにより、顧客体験価値を向上し続ける損保ジャパンのイノベーションの実現に向けて、損害調査の分野で導入したのがTractable(以下「トラクタブル」)の「AI Review」です。

2022年11月、損保ジャパンが全国展開に踏み切ったAI Reviewは、自動車保険事故時の損害調査業務に画像認識AIを取り入れ、保険金支払いを迅速化する。それを損保ジャパンの業務変革に活用するために実証段階から携わってきたのが保険金サービス企画部企画グループリーダー・酒井喬弘氏。執行役員・保険金サービス企画部長の大倉岳氏に訊ねたインタビューに続き、今回は酒井氏にAI Reviewと損保ジャパンの知見を融合した今後の展望についてお聞きました。

(聞き手:カスタマーサクセス部門 日本兼APACヘッド 山村明)

 

2022年11月時点で、国内の大手損害保険会社でトップクラスのAI活用度に

――「AI Review」プロジェクトの中での、ご自身のミッションをお聞かせください。

酒井喬弘氏(以下、敬称略):AI Reviewを活用して損害調査業務のプロセスに変革を生み出すこと、そして、人とデジタルのハイブリッドな損害調査体制を構築することです。デジタルは導入するだけでは全く意味を成さず、それをいかに最大限活用するか、ということが大切です。

そこでの私の役割は、保険金サービス施策の意思決定者である大倉とともに、なぜAI Reviewを使うべきなのか、使うとどのような効果があるのか、何を成し遂げられるのか、といったことを現場に伝えて理解していただくこと。現場の担当者全員がAI Reviewを活用して、本質的な業務の改善を実現してもらうことが目標であり、現在取り組んでいる内容です。

今はAI Reviewの導入期のため、プロジェクトメンバーとして私たちからの情報発信は特に必要だと認識しています。例えば、国内大手損害保険会社の中では最後発の導入ながら2022年11月時点では、全国展開を通して圧倒的な件数でAIを活用した損害調査をするようになりました。つまり、活用度では一番であるということを現場担当者に伝えています。責任者として、こういったメッセージを常に発信し続けることが重要だと感じます。

 

現場で人がAIを育て、2025年までに40%の自動化達成を

――貴社のDXビジョンにおいては、「圧倒的なスピード」というメッセージが印象的です。先日、白川儀一社長が、2025年までにトラクタブルの技術を使って年間100万件に対して40%を自動化すると宣言されました。この目標値についてはどのように捉えていますでしょうか。

酒井:自動化の割合は、2022年8月時点で全体の5%は超えており、順調に推移しています。さらに、40%というゴールを見据えながら、2023年度には少なくとも20%の自動化を達成できるよう取り組みを推進したいと考えています。

圧倒的なスピードを追い求めている背景としては、弊社に限らず業界全体の課題になりますが、損害調査の最前線にいるアジャスター(損害調査のエキスパート)人材の減少があります。アジャスターの高齢化や新規人材の減少を鑑みると、従来の損害調査のサービスレベルをお客さまに提供できなくなるため、私たちは非常に危機感を持っています。そういった事態に陥らないために、1年でも速く、人とAIのハイブリッドによる損害調査体制を構築することがやはり重要だと感じます。

そのためにも、アジャスターに「AIを一緒に育てる」という意識を持ってもらうことも大切です。私たちが1件1件の損害調査で記録していくデータが、トラクタブルのAI Reviewというソリューションを育てていることを理解してもらいたい。その意識がないと、最大限にAI Reviewを活用し、適切なデータやアウトプットを出すことができませんから。

 

AI Reviewを“使いこなす”には、1人1人の当事者意識が不可欠

――貴社アジャスターをはじめとした現場担当者へのAI Reviewを使うことへの意識付けについて、具体的にはどのような取り組みを実施されているのでしょうか。

酒井:全国の保険金サービス部門のAI Reviewの活用状況については、毎週私の方からメールや弊社コミュニケーションサイトを通じて発信しています。また、少なくとも週に一度は、日本全国の責任者や担当者と相互にコミュニケーションを取るようにしています。

重要視しているのは、成功体験と失敗体験を全国で分かち合うこと。このソリューションを「使ってよかった」という経験はもちろん、失敗談の共有も大きな知見になります。失敗事例について、「なぜそうなってしまったのか」という検証や、「このようにすればうまくできた」という改善策を提示することなども大切です。

2022年11月以降、AI Reviewを社内システムとAPIで自動連携させながら、さらに効率的に使えるようになりました。そこで新たに創出される時間を、アジャスターが何にあてるかということにも焦点を当て始めました。

そこでは従来の損害調査業務の短縮にとどまらず、事故対応の質的改善、修理工場へのコンサルティング、不正請求の予防など、お客さまや社会への貢献となる価値創造につなげてほしいということを強く伝えています。

やはり“使う”と“使いこなす”は別次元のものです。使いこなすに至るには「なぜやらないといけないのか」を現場が自分事として、かつ本質的に考えるようになることが不可欠だと実感しています。

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